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同人ゲームやフリーゲームはもちろん、ゲームデザイナーを目指す人、これからゲームを作りたい人、今もゲームを作っているがなかなかうまくいかない人向けの、ゲーム開発に関するブログ。

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人は損に動かされる。それが行動経済学の基本的な考え方で、ソーシャルゲームはその損を時間と最大値を超えた体力に強く植えつけました。……と言うのが前回のお話。その中でも流行るもの、流行らないものと言うものがあり、一番の出世株が艦隊これくしょん、通称艦これです。

 艦これが流行った理由に船舶の愛着や兵器の擬人化というものを上げる人がいますが、それでは先行して兵器の擬人化をおこなっているあくしずや、後発で有利なはずのミリ姫大戦が上手くいかなかった理由が説明できません。特定のゲームが流行るのであって特定のジャンルが流行ることはありません。艦これが流行った理由は別の所にあります。

 いくつか要素はあると思いますが、ここでは行動経済学に習いどこに損を作ったのかを分析してみます。

 まずブラウザゲームの基本であるPLの体力。これは資源と言う形に置き換えられました。それ以外に今までのガチャは即座に入手できましたが艦これでは生産に時間がかかり、生産のための資源も時間で入手が出来る。その資源入手のための遠征にも時間がかかり、出撃させた艦娘の弾薬、燃料も時間で回復、何よりも戦闘で傷ついた艦娘の体力回復にも時間が必要と、徹底して時間の概念が取り入れられています。

 そして、それまでのブラウザゲームと一番異なった点は、艦娘が轟沈と言う形でロストしてしまうというところ。今までも合成と言う形でロストはありましたが、それらはプレイヤーの判断に委ねられていました。よって、損ではなく得するシステムだったのですが、轟沈は戦闘を継続するか否かのプレイヤーの判断ミスによって発生する文字通り損害なのです。

 特に轟沈のシステムを良く知らないプレイヤーは戦闘を軽んじているため、悪気無く連戦させた結果、女の子を殺してしまったという罪悪感は「損」として大きくのしかかりました。まどマギのマミさんの死に近い衝撃を受けたはずです。

 この轟沈という損が艦娘を大事にしようとするモチベーションにつながり、流行の大きな原動力となっていました。また、ゲームデザインのシンプルさ、編成し、進むか退くかなど戦略的な判断だけに絞ったのも解りやすさにつながり、ソシャゲが持つべき手軽さを崩さずに維持できています。コンセプトワークのバランスの良さという土台がある上で、轟沈という大きな損を用意したのが艦これ流行の要因では無いか。と自分は分析します。
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ソシャゲーが定着した理由も行動経済学で説明ができます。一つ前の記事で人は損に動かされると書きました。損の回避こそが面白いに直結すると。つまりソシャゲーが流行った理由もどこに損をしていると感じていて、どうやって回避しようとしているかを見れば解明していけます。

 率直にいってソシャゲーそのものはゲームデザインとしては紙芝居アドベンチャーゲーム以下の出来栄えで、例えば同じ仕組みをオフラインでやった場合、絶対にすぐ飽きます。体力の回復はアイテムでなんとでもなりますがオフラインであれば課金は決済方法が無いのでゲーム内通貨となります。

 時間経過での回復も、ゲーム内の時計はプレイしなければ動かないので、体力が無くなったら10時間進めるなどの操作をプレイヤーが自分自身の手で行い、体力回復をゲーム内通貨で処理し、ただただ上を押すだけのクエスト。クリアで出てくる物語もボリュームも内容も薄い。一体何が楽しいのか。このどうしようもなくつまらないデザインのゲームをなぜかソシャゲーではやってしまう。どこにゲームデザインの肝となる損があるんでしょう?

 結論を述べますと、ソシャゲーのプレイヤーが回避しようとしている損は、あふれてしまった体力です。

 こういう行動に覚え有りませんか? 体力が溢れないようにログインしたり、レベルアップで体力が全快する場合、なるべく体力が減った状態でレベルアップしようとして自分のスケジュールを調整したり。

 人生において一切取り返しの利かない、「時間」という資源。これが体力の回復と言う形で意識され、最大値があるがゆえに、取り返しの利かない時間が無くなっていくという損を強く植えつけられています。だから、あふれないように努力してしまう。ソシャゲーというジャンルが定着した理由はこの体力のあふれる損を回避するところに面白さを見出してしまった訳です。

 また、イベントでのランキングのご褒美、特攻カードなども損を回避するように作られています。まずイベントのランキングでしか手に入らないカード。そして、そのカードを次回イベントの特攻でダメージが極端に大きくすると、これを手に入れないことは損だと意識し、カードが手に入る一定のランキングから外れる事に対して損が植え付けられます。そのうえで、そのカードを手に入れるために、ガチャに特攻カードを用意しガチャを引いて走るよう誘導されています。

 損、損、損。損を強く植えつけることにより射幸心をあおり売り上げを稼ぐ洗練された仕組みがソシャゲーにはあります。もちろん、カードそのものに対する魅力やそれ以外にもいろんな要素が絡まりあって、流行るソシャゲー流行らないソシャゲーというものは存在します。が、ソシャゲーというジャンルのゲームデザインの基礎は、時間を損したくない、という部分です。この設計が他のゲームジャンルと比べて画期的で、出先で気軽に遊べるスマホと親和性が高かったため、一気に浸透したと言う事ですね。
ゲームは勝利を目指すから面白いのであって、勝利が約束されていると面白くはないものです。が、得をするだけのゲームと言うのは、作業感が強くなってしまいます。絶対勝てるゲームは面白くないのです。

 面白いゲーム、面白くないゲームを分けるのは、そこに失敗や損の要素があるかどうかです。そして、損を強く認識するために、初めに得をさせる。これは行動経済学によって証明されていますが、人は損を避けようとし、損を大きく記憶するように出来ています。つまり、ゲームが面白いと感じる瞬間というのは、損を回避できた瞬間でもある訳です。

 例えば、マリオは中間地点を通過することでスタート地点へ戻る損を回避できます。中間地点に限らず、各面に存在する難所は突破することでスタートへ戻る損を回避したり、回避する方法を見出す事によって、そこに快感が生まれ、面白いと認識しています。

 もう少しでこの損を回避できそう、と思うこともまた面白さで、どうやったらこの損を回避できないか、という頭の中でのシミュレーションや模索が楽しく、また、その実践も楽しいものでして、どうやら人間の脳というのはそういう風にできているとの事です。

 実はこの損、なにもゲームに限った話でもありません。同じ作者の作品でも、史上最強の弟子ケンイチは面白いとの声が高いが、それに対してトキワ来たれりはあまり面白くないとの声が多く見られます。何故か。史上最強の弟子ケンイチは最初から弱者という損を強いられている立場であるのに対して、トキワ来たれりは最初からほぼ最強であるため損をしていないからですね。

 では同じく最強の立場でありながら熱狂的なファンが多いゴルゴ13はどうでしょう? 初期の頃からそうですが、中期以降は特に、ゴルゴ13の物語構成は各話の主人公ではない割合が増えていきます。物語の主人公は何らかの得を狙うものであったり、大きな損をした、もしくはしそうな組織がその損を回避する解決策としてゴルゴ13を雇うと言うパターンです。また、ゴルゴ13自身が主人公の話ではゴルゴ13が損をこうむっています。自分の正体を暴かれたり、命を狙われたり、あるいは依頼ルートを壊されそうになったり、任務がぎりぎり成功で飛行機で不時着したり……。

 つまり、損を強く認識する。そして、その損を回避する、解決すると言う一連の流れは面白ささの基礎でもある訳です。これはゲームでも物語でも感じる対象が人間である以上、決して変わらない本質と言えるでしょう。
シナリオが壮大過ぎてゲームが未完成に終わるというのは散々こき下ろしてきた訳ですが、ではシステムで未完成になることは無いのかというと、もちろんあります。

 原因はいくつか考えられるのですが、シナリオと異なりシステムはある程度諦めが付きやすい物でもあります。このシステムを実装したいが時間も技術もないから、今あるもので工夫する。もしくは、このシステムだけで残りは別ゲームで習得する、といった迂回策がまだ取れます。

 それでも新しい事への挑戦はまだ楽しくやれるものなのでシステムに新要素を一つ盛り込むぐらいなら割と簡単でして、ここで詰まることは、実は少ないんですね。

 本当の敵は、過去に作ったものの流用です。特にツクールのコモンイベントやスイッチ、変数は比較的よく詰まります。何故か。スイッチやコモンイベント、変数の番号が変わるからです。どこかわからなくなる。どこを修正していいのかわからなくなってしまうんです。

 作業量を見失ったときにまずやる事は、たとえ流用するものであったとしても実装したい機能、システムを箇条書きにしてリストアップしてください。もちろん新機能を含みます。そして、これらリストアップされたものを一つ一つ実行してエラーを出す事。

 エラーを出す事がなぜ解決につながるのかというと、人間面白いもので、エラーという問題が発生すると、それを解決しようっていう気持ちが出てきます。やる気スイッチですね。で、エラーが出なくなったらリストにあるものの次の項目へと移動する。

 また、エラーを解決していく作業中に新たにやらなければならない事が出てきたときは、すぐにリストに追加します。できるだけ細かい方がやる気につながるし、リストに打消し線を入れると達成感も味わえます。作業前半では消していく快感に、作業後半では完成させたリストが自信と完成へ使命感に変わってきます。

 エラーを怖がらない事。何をしたらいいのかわからないときは、やりたいことをリストアップして整理する事。完成への地図はこれしかありません。
システムにせよシナリオにせよ、未完成のまま放り投げる原因の多くは、実力以上の規模を作ろうとしているところにあります。往々にして、システムは作成の難しさから出来る範囲の事を模索しようとしますが、シナリオについてはつい思いついて書けてしまうため大きくなりがちです。これは企画段階ですでに起こっている場合があります。

 ふと冷静にどのくらいかかりそうか、と計算する時があります。ペース配分を振り返って、今どのあたりであとどのくらいか。このあとどのくらいが解れば、ペースは維持ができるが、解らないと嫌になってしまいモチベーションが下がります。残りがどのくらいかを把握するには完成させた経験が必要で、一つも作ったことが無い人にはこれはなかなか把握できません。

 そういう人のために、先が見えないシナリオ作成作業を簡単に終わらせる方法があります。

 それは、登場人物を削る事。ヒロインが3人いるのなら一人にしてしまいましょう。

 あるいは、妥協する事。スクリプトを沢山使いたいがエラーが出て直せないのなら、スクリプトを減らせばいいんです。

 削ったり、妥協したりというのはプライドが許さないかもしれません。でも、完成させないのと、完成させたのとでどちらが立派なのか。未完成での破棄がどれだけみっともないか。本当にプライドのない行為はどれなのかを考えてみて欲しいんです。そのうえで、そのヒロインは居なければならないのか? そのスクリプトは導入しなければならないのか? 他の表現方法、ツクールの基本機能でできることは無いのか? そういった模索と削減はブラッシュアップと呼ばれる、プロの現場でも行われている立派な作業です。

 削ることを恐れず、未完成を恥だと思う事。そうすれば完成は近づいてきますし、次回作にこの経験は活かせるはずです。
  
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