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同人ゲームやフリーゲームはもちろん、ゲームデザイナーを目指す人、これからゲームを作りたい人、今もゲームを作っているがなかなかうまくいかない人向けの、ゲーム開発に関するブログ。

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良いゲームは多くの場合、損を段階的に用意しています。ただただ一つの損になるのではなく、それが酷くなるとより大きな損をする、といった具合の仕組みです。この段階的な損の中でも最もオーソドックスなものは残機という概念で、残機は頑張れば増やせるが無くなってしまうとゲームオーバーという損が発生します。

 例えばアイギスの場合、敵の移動距離が損として機能していると書きましたが、これは敵を撃破するたびにリカバリー出来る損でもあります。致命的なものはこの残り距離が0になった時。ライフが一つ減る、という形で課金しても取り返せない損が発生します。

 同じように各ユニットに設定されたHPは、ヒーラーによってリカバリーの利く損でありますが、回復が間に合わなかった場合、撤退と言う形で損が発生します。自分の手で撤退させた場合であっても、一度出撃させたユニットは再配置できないという損が発生しますが、それ以上に撃破されてしまうとクリアのボーナスが一つ下がってしまいます。

 撃破された場合、ライフが一つ減った場合、それぞれ☆を一つ失います。クリアで一つ、被害ゼロでひとつ、敵の全滅で一つ、合計3つの☆を一回の攻略で手に入れる事で課金通貨が手に入るため、これは大きな損として機能します。

 他のゲームで言えば、例えば俺の屍を超えて行けではHPが削れた状態でダメージを受けると寿命が減るという大きな損があります。これはロマサガでもLPというシステムで存在していました。ウィザードリィではおなじみの呪文を唱える寺院にて、一定確率で復活に失敗し完全なロストを起こすこともあります。これは運が絡むが、何度死んでも大丈夫というものではないため、プレイヤーはこの損を大きく避けようとします。艦これの場合は大破で戦わせるとロストの危険性が高まるという損があります。

 だいたい、どのゲームもこの段階的な損を3段階に分けて用意しています。これは人間心理によるもので、それより段階を増やすと人間は複雑さ覚えるようになるためです。比較的取り返しの利く損、取り返すのがかなり難しい損、絶対取り返せない損。この3段階を意識して盛り込めば、作成中のゲームはきっと面白くなるはずです。
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キャラロストという損がより強く前面に出てきた名作として、プレイステーションで発売された俺の屍を超えて行けが挙げられます。一族運営という内容ですが、長くても4年ほどの寿命で、どうあがいても死んでしまうという回避できない損が常に横たわっていました。
艦これクローンゲームが苦戦する中、艦これとは異なるシステムを引き下げたゲームで成功した数少ない例がアイギスです。時間の損は2種類の体力だけで、回復も遅い代わりにゲームがしっかりと遊べる仕様で艦これを抜いたり抜かされたりと言う展開を繰り広げています。

 アイギスが新たに用意したゲーム性(損)は2つ。一つはタワーディフェンス。もう一つはキャラクター編成です。

 タワーディフェンスは敵の移動距離そのものが損になるようデザインされたゲームです。味方拠点に近づけば近づくほど損を感じ、数回ゴールされてしまう事でミッション失敗となります。この距離をいかに損せず敵を処理するか、致命的な損である敵のゴールをどうやって回避するかに楽しみを見出すゲームで、ジャンルとして確立しています。

 さらに、アイギスはタワーディフェンス中の経過時間で回復するコストを用意し、いかに素早くユニットを配置していくかと、どう配置していくかの二種類を生み出しました。元々タワーディフェンスの定番として、敵を倒せばお金が手に入り、お金でアップグレードすると言う仕組みがありましたので、これを撃破から時間経過とソーシャルゲーム用にアレンジしたものです。

 ここで重要なのは、高いレアリティで強力なユニットほどコストが高く、配置まで時間がかかってしまうという点です。一人異常に強いキャラクターを作ったところで出撃できなければ意味は無く、そもそもタワーディフェンスそのものは数をどう対処するかが重要なジャンルであるため、一人で処理しきれるようなものでもありません。

 高レアの強力なユニットは先述の通り、コストが高く、数をそろえようにも数を出せない仕組みになっています。そのため、すべてのレアリティがうまく役割を持ち、高いレアリティは必ずしも得ではなく、場合によっては損となりうるものです。

 また、各ステージ毎に適切な編成と言うものが存在し、低いレアリティでも編成でさえ適切であればクリアできるよう調節されています。逆に言うと、いかに強力なユニットをそろえたところで編成が適切でなければクリアできません。

 こういった形で損と得をうまく組み合わせ、単調な作業にはならない、いかにして損を回避するかといった工夫がユーザーでやりやすいようゲームデザインされています。ソシャゲー+タワーディフェンス+編成を上手く組み合わせた成功例と言っていいと思います。
DMMのR18ゲームの中で、一瞬で消えてしまったゲームの一つに鎧姫があります。艦これの要素をベースにゲームシステム面で付加価値をつけたのですが、負荷価値になってしまいあっという間に終了してしまいました。

 負荷となったゲーム部は将棋を模したターン性のSLGでしたが、これのターンの概念が自軍、敵軍で1ターンという基本的なところから外れ、自軍、敵軍で2ターン消費するシステムでした。残りターン数が5ターンの場合、自軍、敵軍、自軍、敵軍、自軍で終了してしまい、実質3ターンしかありません。何度も書いて恐縮ですが、人は損に動かされます。5ターンという言葉から連想するのは5手ですが、実際には3手しかない。心理的には2ターン損をしており、これが離れる大きな要因となりました。回避できない損は面白くありません。

 また、将棋を模したため1ターンに1ユニットしか操作できず、隣接した味方ユニットと同時攻撃という要素があったにも関わらず、ターン制限の都合から1ユニットで殲滅したほうが短く済みました。損をするから面白さを見出すのであって、無双が前提のゲームはただの作業になってしまい面白くはありません。

 この他に致命的だったのが、大型の敵を倒す際、キャラロストと引き換えに強力なアイテムが手に入るという仕組みが実装されていました。損とは、主にプレイヤーの判断ミスから生まれるもので、そこに得があってはいけません。しかし、この仕組みはプレイヤーが要らないユニットを捨ててアイテムを入手する仕組みで、合成と何ら変わりません。自分の判断で得をする仕組みはキャラロストの持つ損をひっくり返してしまい良さを潰してしまっていました。

 付加価値として付けたつもりのゲーム部でありましたが、そのゲーム部がゲームとして面白くなく負荷価値となってしまっていました。なぜ負荷になったか。回避できない損を増やし、回避できる損を減らしてしまったからです。キャラクターやイラストで売れるほどゲームは甘いものではない、という現実を突きつける結果に終わったと思います。
艦隊これくしょんがキャラロストという損を用意してから、多くのブラウザゲームはその要素を取り入れようとしました。結果として艦隊これくしょんに付加価値を付けた形の物が、特にDMMでは急増しました。

 中でも俺タワーは殆ど艦これと同じシステムでしたが大きな差がついてしまいました。どこに問題があったのでしょう?

 俺タワーと艦これの大きな違いはホーム画面でタワーを作るかどうかでした。これは付加価値なのですが、タワーを作る事に対する損、作らないことに対する損が存在していません。人は損に動かされるのです。

 例えばタワーをどう作るか、どう組むかで操作のめんどくささが減るなどと言ったUIは用意されています。が、タワーを組む事自体は何の損の回避にもなりません。生産施設としての役割は確かにありますが、艦これと比較するとその手間が損と感じる人も出てきます。人は損を回避するものであるから、その手間を損と感じる人は艦これへと流れます。

 タワーを作らないことでどんな損があるのか。ここがプレイヤーにはうまく伝わらず、結果、付加価値が負荷価値になってしまいました。ゲームデザインの恐ろしいところです。

 新しく追加した機能にせよストーリーにせよ、そのすべてが評価の対象となります。鉛筆の後ろに消しゴムを付けた、ボールペンの後ろにハンコをつけたなどと言った何かを付け足す方法は、付け足された物もしっかりとデザインされていなければなりません。俺タワーの場合は顕著に表れていますが、それが操作する対象であればあるほど、ゲームとして成立している必要があります。タワー建築に損を用意しなかったからそこに面白さを見いだせず、艦これとの差がついてしまった、と言うのが自分なりの分析です。
  
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